麻央さんの治療過程において、最も議論を呼んだのが「標準治療」の開始タイミングと「代替療法」の利用についてです。一部週刊誌やネットニュースでは「気功や温熱療法に頼り、手術のタイミングを逃したのではないか」という論調が散見されました。しかし、遺された手記や主治医への取材記録を丁寧に追うと、事態は単純な二項対立ではなかったことが浮き彫りになります。
初診時、すでに腫瘍が局所で大きく進行しており、リンパ節への転移も認められていたため、すぐにメスを入れて切除できる状態(手術適応)ではありませんでした。乳がん治療の国際ガイドラインに基づき、まずは腫瘍を縮小させるための「術前化学療法(抗がん剤治療)」が選択されるのが標準的なアプローチです。麻央さん自身も、抗がん剤による全身倦怠感や脱毛、授乳期特有のホルモン環境の変化に耐えながら、主治医と相談を重ねていました。
その過程で、副作用の緩和やQOL(生活の質)の維持を目的に、補完代替医療として自由診療のクリニックで温熱療法(ハイパーサーミアなど)や酵素風呂を取り入れていたことが、後に報道等で知られるようになりました。ブログ内でも、痛みや冷えを和らげるための工夫について触れられており、これらは標準治療を全否定して代替療法のみに傾倒したのではなく、「標準治療の苦痛に耐えながら、少しでも心身を楽にしたい」という切実な願いから併用されていたのが実態です。