卓越したキャリアと経済的成功、そして豊かな対人関係に恵まれながら、なぜ小田切ヒロさんは「法律婚」という選択肢を取らないのでしょうか。その独身理由の深層を探ると、少年期に体験した壮絶な家族環境と継母との確執という、重い原体験に行き当たります。
小田切さんの自著や過去のドキュメンタリー調インタビューによると、わずか5歳の時に実母が家を去り、その直後に家庭に入ってきた継母との間で過酷な日々が始まりました。理不尽な精神的重圧を受け続けた彼は、中学2年生の時に限界を迎え、「ありえない! あんたのせいで鬱になった」と泣き叫びながら継母に訴え出たといいます。しかし、返ってきた言葉は「うちの家庭は全員鬱なのよ」という冷酷な一言でした。
成人して実家を飛び出し、自活を始めてからも継母からの金銭要求は続いたとされています。家族という最も身近であるはずの共同体が、個人の尊厳を削り取る「毒親」の構造を呈していたこの経験は、小田切さんの心に深い影を落としました。「家庭」や「婚姻関係」という形骸化した制度が、必ずしも人間を幸福にするとは限らない――この血の滲むような実感こそが、他者と法的に強固に縛り合う結婚に対して慎重であり続ける根源的な理由と言えます。