世界的な敗血症の定義は、従来の「SIRS(全身性炎症反応症候群)」から、感染に対する宿主生体反応が調節不能に陥り生命を脅かす臓器障害が生じる「Sepsis-3」へと移行しました。日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)をはじめとする最新の指針において、プロカルシトニン敗血症診断基準における位置づけはより洗練されたものとなっています。
現在、敗血症の診断においてプロカルシトニン単独で確定診断を下すことは推奨されていません。意識障害、呼吸不全、低血圧などを評価するSOFAスコアやqSOFAスコアといった臨床的臓器障害スコアと組み合わせ、敗血症バイオマーカー最新の知見に沿って補助診断として用いられます。血液培養検査で原因菌が同定されるまでには通常24〜48時間以上の培養時間を要するため、その空白期間を埋める「最も信頼度の高い早期指標」としてプロカルシトニンカットオフ値が活用されているのです。
さらに現代医療において極めて画期的なのが、「治療の引き際を見極める指標」としての活用です。世界的な課題となっている薬剤耐性菌(AMR)の発生を阻止するため、不必要な抗菌薬の長期投与を避ける「抗菌薬適正使用支援(Antimicrobial Stewardship)」が強く推進されています。
ガイドラインでは、プロカルシトニンの値がピーク時から80%以上低下した、あるいは0.25〜0.5ng/mL未満まで改善した段階を抗菌薬中止の有力な目安として提示しています。患者の熱が下がったという主観的な判断だけでなく、客観的なバイオマーカーの推移を追うことで、安全かつ確実な抗菌薬の投与終了を判断できるようになった功績は計り知れません。