リッケンバッカーというブランドが持つ魔力は、歴代のカリスマたちがいかにしてそのサウンドを表現の武器にしてきたかというストーリーと切り離せません。
ビートルズの初期衝動を体現したのが、リッケンバッカー ジョンレノン愛用モデルとして名高い「325」です。ハンブルク遠征時代に手に入れた3/4ショートスケールのこのギターは、小柄なボディに3基のピックアップを搭載し、激しい三連符のリズムカッティングを正確に刻むための武器でした。キャバーン・クラブの湿気と熱気の中でかき鳴らされたドライで歯切れの良いサウンドは、ビートルマニアを熱狂させた「リバプール・サウンド」の核心そのものでした。
一方、ベースの概念を根底から覆したのがリッケンバッカー ポールマッカートニーのプレイです。1965年にRIC社から贈呈された左利き用の「4001S」を手にしたポールは、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』期において、単なるルート弾きにとどまらない流麗でメロディックなベースラインを構築しました。フェンダーのベースにはない、アタックとクリアな高域特性が、ベースを主旋律と対話する「第二の歌」へと昇華させたのです。
そして日本の音楽シーンにおいて、リッケンバッカーの美学を鮮烈に刻み込んだのが椎名林檎です。デビュー初期の代表曲『丸の内サディスティック』の歌詞に登場する「リッケン620」は、ファンの間で聖典のような扱いを受けています。小柄な彼女が抱えるソリッドボディの銘機「620(Firegloカラー)」は、強烈なヴィジュアルのアイデンティティとなっただけでなく、鋭く突き刺さるカッティングと歌声のコンビネーションによって、90年代末から2000年代の日本のオルタナティヴ・ロック界に決定的な影響を与えました。