インターネット上の旅行コミュニティやSNSでは、「イタリアのトイレは危険で不潔極まりない」「どこに行っても便座がない」といった極端な情報が散見されますが、これには一部誤解が含まれています。
まず、4つ星以上のホテル、高級レストラン(リストランテ)、近年の高速鉄道「フレッチャロッサ(Frecciarossa)」の車内トイレなどは極めて清潔に維持されており、暖房便座こそないものの、通常の便座や紙、石鹸は完備されています。「イタリア全土のトイレが劣悪」というわけではなく、公共性の高い場所(無料または低価格なエリア)とプライベート空間(対価を支払うエリア)のクオリティの二極化が激しいというのが客観的な実態です。
【プロの結論】文化人類学・受益者負担の視点から見出すべき教訓
日本の公共空間における「清潔なトイレが無料でどこにでも存在する」という環境は、世界的に見れば高度な維持管理コストと治安の良さに支えられた極めて例外的なインフラです。
一方、イタリアを含むヨーロッパの都市文化には「サービスの維持には相応の対価が必要である(受益者負担の原則)」という強固な社会通念があります。公衆トイレを有料化したり、バールで一杯のエスプレッソを注文してトイレを借りたりする行為は、清掃員の人件費や水道光熱費を適切に負担し、街の衛生環境を相互扶助的に維持するための成熟した社会システムの一環です。
「無料であって当然」という日本基準の感覚を一度リセットし、「街のカフェ文化を楽しみながら、利用料として小銭を支払う」という現地のルールを受け入れることこそが、トラブルをストレスに変えず快適にイタリア滞在を楽しむための最も重要な判断基準となります。