最高度の警備が敷かれる内閣総理大臣の移動用車両と、地域住民の生活圏を走る地方自治体首長の専用車では、求められる機能も市民感情も異なる。総理専用車にはテロ対策を想定した特殊防弾装甲や通信暗号化システムが不可欠であり、これらは国家の危機管理コストとして一定の理解を得ている。対照的に、地方自治体においては「首長に専用車が必要なのか」という根本的な問いが常に投げかけられる。
過疎化や財政難に直面する自治体では、知事や市町村長が専用車を廃止し、一般職員と同じ共有車やオンデマンド交通を利用する事例も増えてきた。形式的な権威付けを排し、身の丈に合った行政管理・公共政策を実践できているかどうかが、首長の政治姿勢を測るリトマス試験紙となっている。首長車のグレード引き下げが首長の公約として掲げられる背景には、納税者の納得感を重視する民主的なガバナンスへの要請がある。