乾燥帯の国はどう生き抜く?砂漠とステップの差と生活の知恵を徹底解剖

乾燥帯の国はどう生き抜く?砂漠とステップの差と生活の知恵を徹底解剖

乾燥帯の国はどう生き抜く?砂漠とステップの差と生活の知恵を徹底解剖についての最新情報をお届けします。

降水量がほぼゼロに近い砂漠地帯で、古代文明が栄え、何千万人もの定住人口を養うことができた最大の要因が外来河川灌漑農業です。外来河川とは、降水量の豊富な湿潤地域に水源を発し、途中で乾燥地帯を貫流して海へと注ぐ大河を指します。エジプトを潤すナイル川、イラクを流れるチグリス川・ユーフラテス川、パキスタンのインダス川がその代表格です。

「エジプトはナイルの賜物」という歴史家ヘロドトスの言葉通り、エジプトの国土の95%以上は不毛の砂漠ですが、全人口の9割以上がナイル川流域とデルタ地帯のわずかな緑地に密集しています。かつてのナイル川は毎年定期的に増水して肥沃な泥土を運び、天然の肥料となって農業を支えていました。近代以降はアスワン・ハイ・ダムの建設によって年中安定した水供給が可能になった反面、土壌の塩性化や下流への土砂供給の減少という環境負荷も浮き彫りになっています。

一方で、河川から遠く離れた砂漠の真ん中で営まれるエジプト農業オアシスの知恵も見逃せません。カイロから西方へ数百キロ離れたシワ・オアシスやダフラ・オアシスでは、地下深くから自噴する天然水や地下水路(カナートやフォガラと呼ばれる伝統的な地下水路網)を巧みに張り巡らせています。

現地を調査した農業社会学者のフィールドワーク手記や農民の証言には、過酷な砂漠で植物を育てるための「多層構造の農法」が生々しく記録されています。

「砂漠の太陽光の下で、そのまま野菜を育てれば数時間で干からびてしまう。だからまず、過酷な乾燥に耐えるナツメヤシ(デーツ)を高く茂らせて強烈な日差しを遮る天蓋を作る。その木陰にオリーブやザクロなどの中木を植え、さらにその足元の湿った地面で小麦や豆類、野菜を育てる。この3段重ねの立体農法があって初めて、砂漠のオアシスは人間を養う生命のゆりかごになるんだ」(シワ・オアシスの古老による口述記録)

光と水分蒸発を極限までコントロールする緻密な計算こそが、乾燥帯における農業の真髄です。

松本 悠斗
著者

松本 悠斗

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。