映画『トイ・ストーリー』でおなじみのフレーズ「アンディが来た!」に対して、かつて米国のディズニーパークで見られた「キャラクターが突然床に倒れておもちゃのフリをする」というリアクション。2010年代前半に動画共有サービスやSNSを通じて世界中に拡散し、大きな話題を呼びました。しかし、この演出は現在、ディズニーの全パークにおいて公式に中止されています。その背景には、テーマパーク運営における極めて現実的かつ重大な3つの理由が存在します。
最大の要因は、キャラクターアクターの身体的安全性の確保です。ウッディやジェシーなどのコスチュームは頭部を含めて重量があり、視界も通常の歩行時より著しく制限されます。硬いアスファルトやコンクリートの地面へ突発的に倒れ込む動作は、頸椎の損傷、関節の捻挫、打撲などの重大な負傷リスクを常に伴います。SNSの普及によって1日に何十回・何百回と連続して声をかけられる事態が発生し、現場キャストの身体的負荷が許容限度を超えたことが直接の引き金となりました。
次に挙げられるのが、特注コスチュームの損耗とメンテナンスコストです。ディズニーのキャラクター衣装は高度な職人技で作られた極めて高価な資産であり、地面に激突・摩擦することで生じる布地の破れや汚れの補修には多額の費用と時間がかかります。さらに、倒れ込んだ際に周囲の小さな子どもを踏み巻き込む危険性や、グリーティング列の進行が大幅に遅延して他のゲストの体験価値を損なうという、パークマネジメント上の課題も重なりました。