彼女が本名である「能年玲奈」を捨て、ひらがな表記の「のん」へと改名せざるを得なかった背景には、前所属事務所であるレプロエンタテインメントとの専属芸術家契約トラブルと、芸能界特有の過酷な契約条項が存在します。
事態の発端は、国民的人気を獲得した直後の2015年に浮上した独立騒動でした。報道各社の取材データや当時の関係者証言によると、本人は『あまちゃん』終了後、演技の幅を広げる仕事を強く希望していたものの、事務所側との間で作品選定や将来的なマネジメント方針をめぐり深刻な意見の相違が発生。コミュニケーションが断絶するなか、2015年1月に個人事務所を設立したことで両者の亀裂は決定的なものとなりました。
2016年6月の契約満了に伴い独立を果たしたものの、前事務所側は「契約期間の延長」などを主張して対立。さらに、契約条項に含まれていた「契約終了後も『能年玲奈』を芸名として使用する場合は前事務所の承諾を要する」という趣旨の取り決めが大きな足かせとなりました。法的には本名であっても、芸能ビジネス上は商標権や芸名としてのパブリシティ権が絡むため、前事務所の許可なく本名で活動を強行すれば損害賠償請求などの訴訟リスクを抱える構造になっていたのです。
結果として、泥沼の法廷闘争を回避し、一刻も早く表現活動を再開するために選ばれた苦渋の決断が「のん」への改名でした。のんという芸名の由来について、本人は改名当時の手記やメディア取材において、「長年親しい友人から呼ばれていたニックネームであり、響きがシンプルで前向きになれる」と語っています。過去のしがらみを断ち切り、まっさらな状態でゼロからリスタートを切るための象徴的な決断でした。