日本神話および古代史において、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の御神霊を奉戴し、大和国から理想の鎮座地を求めて巡行した皇女・倭姫命の足跡は「元伊勢」として各地に点在しています。『神道五部書』などの古記録によれば、垂仁天皇の御代、巡行の途上で近江国に立ち寄り、4年間にわたって祀られた宮居が「甲可日雲宮(こうかのひくものみや)」とされています。
この甲可日雲宮の旧跡として極めて有力視されているのが、滋賀県甲賀市水口町に鎮座する日雲神社です。社伝によると、天照皇大神が伊勢へ遷座された後、その神徳を偲んで社殿を造営したのが創祀と伝えられています。
主祭神には天照皇大神(あまてらす皇大神)を祀り、相殿として朝廷の祭祀を司った中臣氏の祖神である天児屋根命(あめのこやねのみこと)、そして武勇と国家鎮護の神である品陀和気命(ほんだわけのみこと/応神天皇)の三柱が奉斎されています。古代王朝の祭祀構造と中世以降の武家信仰が重なり合うこの地は、歴史の深奥に触れる場所として唯一無二の存在感を放ち続けています。