彼の真骨頂が最も発揮されるジャンルといえば、息もつかせぬミステリー・サスペンスだ。人間の業や心の闇、複雑に入み組んだ心理戦を描く作品において、彼の演じるキャラクターは群を抜いた解像度で迫ってくる。セリフのない数秒間の静寂、わずかな視線の動きだけで、観客の胸に拭い去れない不安と強烈な快感を植え付ける。
海外の名匠たちが口を揃えて称賛するのは、言語の壁を軽々と超える「肉体的な表現力」だ。言葉だけに依存せず、呼吸の乱れや微妙な筋肉の緊張感で感情の機微を表現できる稀有な存在。サスペンスの緊張感を極限まで高める狂言回しとして、彼以上の存在を見出すことは極めて難しい。