言葉の定着には、メディアや大衆文化の力も大きく貢献している。昭和から現代に至るまで、サザンカという名称が全国津々浦々へ浸透した背景には、演歌歌手の大川栄策氏が1982年にリリースし大ヒットを記録した名曲『さざんかの宿』の存在が不可欠だ。切ない歌詞と哀愁を帯びたメロディは日本中の歌謡ファンを魅了し、「さざんか」という音の響きを国民的知名度へと引き上げた。
さらに、NHKをはじめとする公共放送のニュースや季節の特集番組、各種報道番組が「初冬の訪れを告げる山茶花」として映像とともに茶の間に届け続けたことも、視覚的な漢字「山茶花」と聴覚的な「サザンカ」という読みを固く結びつける役割を果たした。歌謡曲とテレビメディアのシナジー効果が、一見読みにくい漢字表記を誰しもが知る季節のアイコンへと変貌させたのだ。