後宮へ潜入した嫪毐を迎えたのは、かつて趙の首都・邯鄲で筆舌に尽くしがたい迫害を受け、心を完全に閉ざしていた太后でした。絶望と憎悪に囚われていた太后にとって、嫪毐の持つ素朴な優しさと献身は、凍てついた心を溶かす唯一の拠り所となっていきます。
やがて二人の間には男児が2人生まれるという、王族として許されざる事態へと発展します。もしこの隠し子の存在が宮廷に知れ渡れば、子供たちはおろか太后自身の命も保証されません。嫪毐は太后と子供たちを匿い、山陽(太原)の地へ移り住みながら、日陰の身として怯えつつも穏やかな家族の時間を育んでいきました。
しかし、趙国や楚国、そして呂不韋の思惑が絡み合う中華の権力闘争は、彼らに平穏を許しませんでした。太后を操り秦の弱体化を狙う列国の策動により、山陽は突如として独立国家「毐国」の建国を宣言。嫪毐は望まぬまま、その頂点である「山陽君」として担ぎ上げられてしまうのです。