1973年に発表され、一大社会現象を巻き起こしたSF小説『日本沈没』。日本列島が地殻変動によって海に沈むという未曾有の危機を描いたこの作品は、単なるパニック映画の原作という枠組みを遥かに超えている。極限状態に置かれた国家と国民、そして政治家や科学者がいかに決断を下すべきかという、本質的な問いがそこには刻まれていた。
最新の地質学や防災研究の観点から見ても、描かれた地殻変動のディテールや官僚機構の動向は驚くほどリアルだ。科学的データへの貪欲な探求心と、人間心理への冷徹な眼差し。それらが融合した重厚なシミュレーションこそが、本作を半世紀経った今なお色褪せない名作たらしめている理由に他ならない。