彼女の才能をいち早く見抜き、その真価を世界へと押し広げた立役者の一人が映画監督の黒沢清だ。心理サスペンスの金字塔と称される代表作の撮影現場において、監督は彼女の芝居に対して異例の「ノー指示」を貫いたという。
撮影現場のスタッフが明かす秘話によれば、緊迫する取り調べシーンで彼女が見せたふとした目線の泳ぎと、冷徹な微笑。台本には一切書かれていなかったその微小な演技に対し、黒沢清監督はモニター前で思わず息を呑み、「そのままでいい、カメラを止めるな」と静かに指示を出したという。徹底した役作りと直感的な演技の双発。それこそが、彼女がスクリーンに解き放つ「本物の凄み」なのだ。