彼女の歩んできた紗倉まなの経歴を振り返ると、常に業界の常識を覆すマイルストーンの連続であったことがわかる。2012年のデビュー直後から爆発的なセールスを記録し、主要アワードの新人賞を独占。その後も業界最高峰とされるイベントで最優秀女優賞を獲得するなど、輝かしい紗倉まなの受賞歴は枚挙にいとまがない。
しかし、彼女の真の独自性は賞レースを席巻した後に始まった。2016年に発表した処女小説『最低。』は、AV業界の内側と女性たちの孤独を容赦ない筆致で描き出し、第30回東京国際映画祭にも出品され映画化された。その後も『春、死なん』などの長編小説を次々と世に送り出し、純文学の文脈からも正当に評価される「小説家・紗倉まな」の地位を確立したのである。身体と言葉という対極の表現手段をハイレベルで往復するプレイヤーは、日本の文化史上を見渡しても極めて稀有な存在だ。