発表当日のX(旧Twitter)のトレンド上位を占めるのは、受賞ワードそのものよりも「#流行語大賞おかしい」「#誰も使ってない」という批判的なハッシュタグです。一般消費者が抱く「流行語」とは、学校や職場、家庭、あるいはSNSのタイムラインで日常的に交わされたリアルな生きた言葉を指します。しかし、主催者側が公表している理念と一般読者の認識には、決定的なズレが存在しています。
発行元である自由国民社が提示する公式見解を確認すると、新語・流行語大賞の目的は「1年間に発生した多様な『新語・流行語』の中から、軽妙に世相を衝いた言葉を選び、その文字・言葉に深くかかわった人物・団体を顕彰するもの」と定義されています。つまり、統計的な使用頻度や検索ボリュームの多寡を競うコンテストではなく、あくまで「その年の世相を切り取る批評的なキーワード」を審査員が主観で選出する文化賞なのです。
ノミネート語の選出プロセスにおいても、ベースとなるのは同社が刊行する年鑑誌『現代用語の基礎知識』に収録された用語や、同誌読者アンケートの集計結果です。ネット上で日常的にバズを起こしているショート動画発のミームやゲーミングスラング、若年層コミュニティの俗語は、年鑑誌の編纂プロセスに入り込みにくく、結果として「世間では誰も知らない・使っていない言葉」が候補に残り、最終審査へと進む構造が生まれています。