白良浜に降り立つと、まず驚かされるのが砂のきめの細かさと、炎天下でも熱を持ちにくいサラサラとした感触です。白良浜の砂が白い理由は、地質学的な成分構成にあります。一般的な海水浴場の砂が砕けた岩石や貝殻などの有色鉱物を多く含むのに対し、白良浜の砂は「石英砂(せきえいさ)」と呼ばれるガラスの原料にもなる鉱物で構成されています。白浜町公式データによれば、この砂には二酸化ケイ素(珪酸)が約90%以上含まれており、太陽光を乱反射させるため、雪のようにまばゆい純白に見えるのです。
しかし、現在私たちが目にする白砂のすべてが、大自然の営みだけで保たれているわけではありません。昭和30年代後半から40年代の高度経済成長期、周辺地域の河川開発や護岸工事によって上流からの土砂供給が激減。さらに大型台風や冬の強い季節風による高波が重なり、年間数万トンもの白砂が海中へ流出してしまいました。かつては岩肌が露出し、白砂の消滅が現実味を帯びる壊滅的危機に直面したのです。
この危機を打開すべく、和歌山県と白浜町が1989年(平成元年)から本格導入したプロジェクトこそが、オーストラリア産珪砂の真相です。調査の結果、西オーストラリア州パース近郊などで採掘される高純度の天然珪砂が、白良浜本来の砂と成分・粒径・色合いにおいて極めて合致することが判明しました。毎年計画的に海外から砂を運搬して投入する「養砂(ようさ)事業」を実施することで、あの奇跡的な620mの白い渚が守り続けられています。ネット上では「人工的な砂浜に過ぎない」といった冷ややかな言説も見られますが、実情は「失われかけた奇跡の天然資源を、国際的な環境土木技術によって蘇らせた景観再生の結晶」と捉えるのが正確な事実です。