日本のカルト犯罪史において、最大級の惨劇として刻まれているのがオウム真理教による一連の凶悪事件だ。1995年の地下鉄サリン事件は、平和な朝の通勤風景を一瞬にして地獄絵図へと変えた。化学兵器サリンを大都市の地下鉄に散布し、不特定多数の市民を無差別に殺傷した行為は、近代国家に対する宣戦布告に等しかった。
教祖の麻原彰晃(本名・松本智津夫)は、終末思想とハルマゲドンの予言を巧みに操り、信徒たちに絶対服従を強いた。高学歴の理系エリートや医師たちが教団の中枢に集まり、自動小銃の密造や生物化学兵器の開発に手を染めた事実は、当時の社会に冷酷な衝撃を与えた。「崇高な教えのためなら殺人も肯定される」という歪んだ救済論の行き着いた先は、無実の命を奪う無差別テロだった。