インターネット上の掲示板やSNSでは、今なお「三大財閥が日本の政治・経済を裏で操っている」「財閥のドンがグループ全社に指令を出している」といった陰謀論的な記述が見受けられます。しかし、現代の法制度および企業統治の観点から見れば、これらは明白な誤解です。
財閥と企業集団の根本的な違いは、「ピラミッドの頂点に立つ持株会社と同族が存在するか否か」に集約されます。
戦後の1950年代初頭、サンフランシスコ平和条約の発効と朝鮮戦争に伴う「逆コース(冷戦激化による対日政策の転換)」を経て、分割されていた旧財閥系企業は再結集を果たしました。商号やロゴマークの使用が再び認められ、三菱の「金曜会」、三井の「二木会」、住友の「白水会」といった各社のトップが集う「社長会」が結成されました。
しかし、現代の社長会には法的権限や経営支配力は一切ありません。社長会はあくまで各社代表者の親睦、グループブランドの管理、文化事業や慈善活動の協議を行う場であり、個々の企業の投資判断や人事に介入することは独占禁止法上も不可能です。実際に、グループ内であっても三菱UFJ銀行と三菱商事が対立する経営案件が存在するように、各社は株主利益を最優先とする完全な独立企業体として運営されています。
また、韓国財閥と日本の企業集団の違いを比較すると、ガバナンスの差異はさらに際立ちます。サムスングループや現代(ヒョンデ)自動車グループに代表される韓国のチェボルは、現在も創業一族(総帥)がグループ全体の戦略、役員人事、巨額投資をトップダウンで決定します。これに対し、日本のかつての財閥系企業は、専門経営者と社外取締役を中心とする分散型ガバナンスへ完全に移行しており、「同族支配」という意味での財閥は日本にはもはや1社も存在しません。