物語が終盤に向かうにつれ、文学賞の最終選考会をめぐる水面下の駆け引きは頂点に達します。選考委員たちの派閥争いや貸し借りの関係、個人的な感情による誘導など、純粋な作品の優劣とは乖離した論理で選考が進んでいく様は圧巻の迫力です。
読者の意表を突くクライマックスでは、誰もが本命と目していた作品や、裏工作によって当確と見られていた候補作が思わぬ形で足元をすくわれる事態が発生します。受賞という栄冠を手にした者、あと一歩で夢を絶たれた者、そして賞を道具として利用しようとした者たち――。それぞれが迎える幕切れは、勝利者にとっても決して手放しの幸福ではなく、どこか苦い余韻を残します。
タイトルの『プライズ(Prize=賞・賞品・獲物)』が象徴するのは、単なるトロフィーではなく、「他者からの承認」という麻薬に囚われた人間たちの悲哀です。賞を掴み取った瞬間に作家が直面する孤独と重圧を描き切ったラストシーンは、読む者の胸に鋭い問いを突きつけます。