この渓谷の最大の特徴は、足元から頭上までを埋め尽くす圧倒的な苔のバリエーションだ。日本に自生する苔類の約4分の1にあたる、300種類以上がこの狭いエリアに密集している。世界的に見ても極めて珍しい学術的価値を持つ森なのだ。
湿潤な空気が満ちる渓谷内では、岩肌も倒木も、まるでベルベットの布を被せたかのように鮮やかな緑で覆われている。ルーペを片手に観察すると、そこには小さな胞子体が作り出すミクロの森が広がっている。雨上がりの朝などは特に美しく、水滴を弾く苔たちが光を浴びてキラキラと輝く様子は息をのむ美しさだ。