早朝の豊洲市場では、銀色に輝く小箱を前に仲卸と寿司職人が静かな火花を散らしている。近年、地球規模の海水温上昇や海流の変化は水産業全体に大きな影を落としており、コノシロの漁場や脂の乗り方にもかつてない変動が生じている。熊本の天草や佐賀の有明海、あるいは東京湾など、名産地から届く魚の質は日ごとに異なるため、仕入れの目利きにはこれまでにない洞察力が求められている。
仲卸の名手たちは、魚の腹の厚みや皮の柔らかさを一目で見抜き、その日最高のロットを選別する。脂が乗りすぎたコハダは酢が入りにくく、逆に脂が薄すぎると酢の酸味が勝ちすぎてしまう。海と市場のリアルタイムな状況を把握し、魚の状態に合わせて仕込みの設計図を毎日ゼロから書き直すことこそが、激動する環境下で本物の味を守り続ける職人たちの生命線となっている。