豊後高田市の魅力は、行政の定住施策だけにとどまりません。一度訪れた観光客を虜にし、「ここに住んでみたい」と思わせる豊かな地域資源と情緒あふれる景観が市内各所に息づいています。
その筆頭が、全国的な商店街再生の成功モデルとして名高い「昭和の町」です。平成の初め、大型商業施設の台頭によって衰退の一途をたどっていた中央商店街の店主たちが立ち上がり、「最も賑わっていた昭和30年代の活気を取り戻そう」と舵を切りました。建物のファサードをレトロ調に修復し、各店舗が自慢の「一店一宝」「一店一品」を展示・販売する取り組みは、年間数十万人を集める観光名所へと成長。駄菓子屋の夢博物館や昭和ロマン蔵など、ノスタルジーと人情味あふれる接客が世代を超えた支持を集めています。
自然景観に目を向ければ、周防灘に面した真玉海岸(またまかいがん)の美しさが際立ちます。大分県で唯一、水平線に夕陽が沈む海岸として知られ、「日本の夕陽百選」にも選定。干潮時と日の入りが重なる時間帯には、干潟に現れる縞模様の水たまりが黄金色や茜色に染まり、息を呑むような幻想的なグラデーションを描き出します。SNSを通じて国内外からフォトグラファーが詰めかける絶景スポットです。
さらに歴史の深さを実感させるのが、国東半島に花開いた神仏習合の信仰文化「六郷満山(ろくごうまんざん)」の拠点である富貴寺(ふきじ)です。境内にある国宝の大堂は、宇治の平等院鳳凰堂や平泉の中尊寺金色堂と並び称される平安建築の傑作であり、九州最古の木造建築物。新緑の青もみじや秋の黄金色のイチョウが敷き詰められた絨毯は、古都の静寂を今に伝えています。
食の領域でも、豊後高田市は独自のブランドを確立しています。春と秋の年2回新そばが味わえる「豊後高田そば」は、厳しい生産基準と手打ちの技術認定を受けた専門店のみが提供を許される名物グルメ。休日のランチタイムには手打ちそばを求めて県内外から長い行列ができます。豊かな海が育む「岬ガザミ(ワタリガニ)」や極上の豊後牛など、これらの特産品はふるさと納税の返礼品としても不動の人気を誇り、市の貴重な自主財源を生み出すエンジンとなっています。
旅の計画を立てるなら、午前中に昭和の町でレトロ散策とランチの本格手打ちそばを堪能し、午後は富貴寺の静謐な空間で歴史探訪、夕暮れ時に真玉海岸で夕陽を眺めて温泉に浸かるという王道の観光モデルコースがおすすめです。コンパクトなエリアに文化と自然が凝縮されている点も、観光客や移住検討者にとって大きな強みとなっています。