本作を語る上で避けて通れないのが、ジラーチの声を担当した声優・鈴木富子さんの熱演と、その後の悲報です。鈴木富子さんは『北斗の拳』のリン役や『ドラゴンボールZ』のデンデ役など、数々のアニメ史に残る純真なキャラクターを演じてきた屈指の名優でした。しかし、映画公開直前となる2003年7月7日、急性心不全により47歳という若さで突如として逝去されました。
劇中でジラーチが発する無垢で愛らしい声、そしてマサトに向けて絞り出すような温かい別れの言葉は、結果として彼女の生前最後の演技(劇場アニメ遺作)となりました。ジラーチが千年に一度目覚める奇跡のポケモンであるという設定と、鈴木さんが遺した命の輝きが重なり合い、当時の特番インタビューや関係者の証言でも「まるで命そのものを吹き込んだかのような奇跡的な演技」と称賛されました。この悲しくも尊い背景を知るファンにとって、劇中のジラーチの声は特別な重みを持って響きます。
さらに、映画の感動を永遠のものにしたのが、当時若干14歳だったシンガー・林明日香さんが歌い上げたエンディング主題歌「小さきもの」です。作詞・三浦徳子氏、作曲・山移高寛氏によるこの楽曲は、民族音楽的な雄大さと母性のような慈愛を湛えています。当時14歳とは信じがたい圧倒的な声量と表現力で、「私のかけがえのない人」への無償の愛を歌い上げ、スタッフロールが流れる劇場の暗闇で多くの観客を涙に暮れさせました。