一般的に歯の喪失は加齢とともに進むものですが、芸能界では20代〜30代の若さで複数の歯を失うケースが見受けられます。そこには、華やかな世界の裏側に潜む職業特有の過酷な労働環境と心理的プレッシャーが密接に関係しています。
第一に挙げられるのが、不規則な生活リズムと歯科通院の困難さです。ロケや収録が深夜・早朝に及ぶ中、極度の疲労から歯磨きを怠り、虫歯や歯周病の初期症状を放置してしまうケースが散見されます。歯科治療は複数回の通院が必要となるため、スケジュールの読めない若手タレントほど途中で通院を断念し、結果として抜歯に至るリスクが高まります。
第二に、精神的ストレスや摂食障害に伴う「酸蝕症(さんしょくしょう)」です。過度な体型維持プレッシャーから習慣的な嘔吐を繰り返すことで、強酸性の胃液が前歯の裏側やエナメル質を溶かし、若年層でありながら歯がボロボロになってしまう深刻な事例も報告されています。
第三に、短期間で劇的なビジュアル変化を求める「クイック矯正」の代償です。ワイヤー矯正には2〜3年の期間が必要ですが、オーディションや即座のメディア露出に間に合わせるため、健康な天然歯を大きく削って神経(歯髄)を抜き、セラミックを被せる手法を選ぶタレントが後を絶ちません。神経を失った歯は血流が途絶えて脆くなり、10年〜20年後に根破折(歯の根が割れること)を起こして30代・40代で抜歯を余儀なくされるという構造的なリスクが存在します。