「塩分を控えるために食塩無添加の野菜ジュースやナッツを毎日大量に口にしている」。取材現場や医療・栄養相談の現場で、中高年層を中心にこうした声を耳にする機会は後を絶ちません。健康のために良かれと思って選んだ選択が、知らず知らずのうちに塩分摂取を積み重ねる結果につながっています。
なぜこのような誤認が生まれるのでしょうか。その根底には、消費者庁が所管する食品表示法基準の規定があります。食品表示法において「食塩無添加」とは、あくまで「原材料として食塩(塩化ナトリウム)を添加していない」という製造工程の事実を指しているに過ぎません。自然界の動植物や野菜、魚介類、大豆などの農水産物には、生育の過程で土壌や海水から吸収された天然のナトリウムが存在します。これを食品加工業界では原材料由来の塩分と呼びます。
つまり、製造時に塩をひと振りも入れていなくても、素材自体がナトリウムを抱えていれば、製品中の食塩相当量は決してゼロにはなりません。表面の「無添加」というクリーンな響きが、「塩分フリー」「完全なゼロ」であるかのような認知の歪みを生み出している点が、まさに食塩無添加の落とし穴と真相です。