そもそも、なぜ私たちは節目におはぎを食べるのか。その背景には、日本人が古来より大切にしてきた自然への畏敬と先祖供養の精神が存在します。
春分と秋分を中心とする「お彼岸」におはぎ(ぼたもち)を供える習慣は、江戸時代から広く庶民の間に浸透しました。小豆の鮮やかな「赤色」は古来より魔を祓い、邪気を遠ざける神聖な力を持つと信じられてきました。また、かつて貴重品であった白米やもち米、そして砂糖を贅沢に使った料理を先祖へ捧げることは、最大の敬意と感謝の表現でした。
季節の移ろいとともに呼び名が変わる点も、和の情緒を象徴しています。春に咲く牡丹(ぼたん)にちなんだ「ぼたもち」、秋の萩(はぎ)にちなんだ「おはぎ」。春は冬を越して皮が固くなった小豆を滑らかな「こしあん」にし、秋は収穫されたばかりの瑞々しい新小豆の風味を活かして皮ごと「粒あん」で仕立てるという職人の細やかな配慮が、現在の食文化の根底に流れています。