日本国内のメディアや教育現場で長年引用されてきたのが、「世界で水道水が飲める国は9〜15カ国程度しかない」という言説です。この根拠となっているのが、国土交通省の公表資料『日本の水資源』における国際比較データです。最新の国際衛生統計や各国の水質モニタリングを踏まえて精査すると、2026年現在でも「国中どこでも蛇口の水をそのまま飲める」と評価される国は、世界196カ国のうちわずか6〜8%程度にとどまります。
水ジャーナリストの橋本淳司氏らの詳細な調査でも指摘されている通り、この分類には「国土のほぼ全域で直接飲める国」と「大都市や特定地域に限って飲める国」という厳格な基準差が存在します。旅行者が安易に「先進国だから大丈夫」と思い込むのは非常に危険です。
現在、国際機関や水質調査機関によって「全土で水道水が直接飲用可能」と概ね合意されている主な国々は以下の通りです。
- ヨーロッパ北部・山岳部:アイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、オーストリア、スイス
- オセアニア:ニュージーランド、オーストラリア(主要都市部中心)
- アジア:日本、(シンガポール:全土で水質基準は満たすが受水槽管理に留意)
水道水が飲める国はヨーロッパの一部地域や、氷河・森林などの豊かな水源と強固なインフラ投資を持つ国に集中しています。一方、大国であるアメリカやカナダ、イギリスなどは広大な国土ゆえに地域ごとの水源格差やインフラ劣化の差が激しく、「都市部や特定の州では飲めるが、全土一律で安全とは断言できない」という枠組みに分類されます。