山田尚子監督が本作で試みた手法は、従来の商業アニメーションの常識を覆すものだった。画面のトリミングや被写界深度の極端な浅さ、そして環境音と足音だけで少女たちの内面を表現する音響設計。制作陣の独占インタビューによれば、校舎の廊下の足音は実際に木床を響かせて録音され、みぞれと希美の足音が歩調を合わせるか否かで、二人の心の距離をリアルタイムに表現したという。
また、京都アニメーションの作画スタッフは、オーボエという楽器の指使いや息の入れ方を完璧に再現するため、プロの演奏家の運指を多角度からスローモーション撮影し、作画に落とし込んだ。画面上で刻まれるみぞれの指先の一つひとつに、アニメーターたちの異常なまでの執念が宿っている。