カラフルで底抜けに明るい80年代アメリカン・ロックの象徴と見なされている「Jump」ですが、そのリリックの起点となったのは極めてショッキングな現実の事件でした。当時、ボーカルのデヴィッド・リー・ロスは、ロサンゼルスのローカル局が報じていた「ビルから飛び降りようとしている男」の生中継ニュースを自宅で目撃していました。
現場には野次馬が集まり、「飛び降りろ!(Jump!)」と叫ぶ異様な熱気に包まれていました。デイヴは自著や後年のインタビューで、その光景を目にした瞬間に強烈なインスピレーションを受けたと告白しています。「あの群衆の中には、単なる悪意ではなく『どうせなら思い切って飛んでみろ、人生を前へ進めろ』という奇妙な励ましすら混ざり合っていた」と回顧されています。
デイヴはこのグロテスクとも言える人間模様を、単なる悲劇ではなく「恐れを捨てて新しい一歩を踏み出す(一世一代の賭けに出る)」という人生の比喩へと昇華させました。こうして、ネガティブな報道から生まれたフレーズは、世界中の人々を奮い立たせるポジティブなメッセージへと劇的に生まれ変わったのです。