日本で広く認知されている赤いシャツを着たぽっちゃり体型のプーさんは、ウォルト・ディズニー社が1961年に映像化権を取得し、1966年に公開した短編アニメーション映画『プーさんとはちみつ』によって確立されたスタイルです。文学史における「クラシック・プー」と映像産業における「ディズニー版プー」には、設定や演出において数多くの決定的な相違点が存在します。 原作のプーは基本的に衣服を身に着けておらず、挿絵の一部で冬場に短いチョッキを着ている程度でした。しかし、アニメーション化に際してディズニーのアニメーター陣は、視覚的なインパクトと親しみやすさを向上させるためにアイコニックな赤い半袖シャツを着用させました。また、性格面でも原作のプーは「頭が小さくて考えごとが苦手だが、時折詩を吟じる哲学者肌」であるのに対し、ディズニー版では「とにかく食いしんぼうでハチミツのことばかり考えている愛されキャラ」というコミカルな側面が強調されています。 キャラクターのラインナップにも明確な違いがあります。ディズニー版でおなじみのジリスの「ゴーファー」は、「原作の本にはいないよ(I'm not in the book)」という自虐的な台詞とともにアメリカの観客向けに追加されたディズニーの完全オリジナルキャラクターです。また、トラの「ティガー」は原作小説では2作目の『プー横丁にたった家』(1928年)から登場しますが、アニメでは最初期から主要メンバーとして組み込まれました。
日本における歴代吹き替え声優の系譜も、ファンの間で長年愛されてきた要素のひとつです。1960〜90年代にかけて親しまれた八代駿の愛嬌あふれる語り口、2000年代を支えた亀山助清の包容力ある声、そして実写映画『プーと大人になった僕』(2018年)などでプーの声を担当したかぬか光明や、端正な語り口で知られる田中秀幸(旧吹き替え版クリストファー・ロビン等)など、錚々たる名優たちがプーの独特なテンポ感を紡いできました。