ペットボトル飲料の値上げが繰り返される背景には、消費者の目に見えにくい複合的なサプライチェーンの危機が存在します。「水やお茶を詰めているだけなのに、なぜ高くなるのか」という疑問に対し、業界関係者が口を揃えて指摘するのがPET樹脂と資材コストの跳ね上がりです。
清涼飲料水の容器となるPETボトルは原油由来のナフサを原料としており、原油相場の高止まりと円安の長期化がダイレクトに原価を押し上げます。さらに環境負荷低減のために推進されている「ボトルtoボトル」の水平リサイクル用樹脂も、回収・再加工プロセスに膨大な熱エネルギーと設備投資を要するため、バージン樹脂以上の調達コストが発生するジレンマを抱えています。ラベル用のフィルムや段ボール、キャップ用樹脂に至るまで、容器包装資材の全面高が続いているのです。
さらに深刻な打撃を与えているのが、輸送現場の崩壊を防ぐための物流費の上昇です。トラックドライバーの時間外労働上限規制が導入された「物流2024年問題」の余波は、重量物かつ低単価の代表格である飲料業界を直撃しました。液体を満載したパレット輸送はドライバーへの身体的負担が重く、運送事業者からの運賃引き上げ要求を拒否できない環境が定着しています。工場から配送デポ、そこから各店舗や自販機へ小口配送するオペレーションコストは過去最高水準に達しており、中身の原材料費以上に「運ぶための費用」が売価を押し上げているのが偽らざる実情です。