絶叫アトラクションを語る上で避けて通れないのが、安全性と身体リスクの境界線です。ネット上では「絶叫マシンで首の骨が折れた」「内臓破裂した」といった都市伝説が飛び交いますが、その発端となった実例の一つが、富士急ハイランドで稼働していた「ド・ドドンパ」の運行トラブルです。
ド・ドドンパは、圧縮空気を用いたエアーローンチ方式により、発射後わずか1.56秒で時速180km(加速度約3.75G)に達する世界屈指の加速力を誇っていました。しかし、2020年12月から2021年8月にかけて、乗車した利用者が頚椎や胸椎を圧迫骨折する重傷事故が相次いで報告されました。調査の結果、急激な加速度に対して乗客が適切な乗車姿勢(頭をヘッドレストに密着させる等)を維持できなかったことや、強烈なGが人体骨格にかかる負荷の限界値を超えていた可能性が浮き彫りとなりました。
富士急ハイランドはメーカーとの協議を重ねたものの、乗客の負傷リスクをゼロに抑える抜本的な改修が困難であると判断し、2024年3月にド・ドドンパの正式な営業終了(解体)を発表しました。この一件以降、国土交通省の安全ガイドラインや各遊園地の運行前チェックは劇的に厳格化されており、現在の主要マシンでは乗車前の姿勢指導や安全バーの多重ロックシステムの強化が徹底されています。「極限のスリル」と「人体の生体力学的許容量」のせめぎ合いは、現代のコースター開発における最大の課題となっています。