ハイブランド全体の高価格化が進むなかでも、とりわけ注目を集めるのがヴァンクリーフの値上げ理由です。同メゾンが属するリシュモングループの財務報告や貴金属市場の動向を分析すると、単なるインフレ転嫁にとどまらない複数の要因が浮かび上がってきます。
第一の要因は、地金である18Kゴールドの歴史的高騰と、厳格な基準を満たす天然素材(ホワイトマザーオブパール、オニキス、カーネリアンなど)の調達コスト上昇です。ヴァン クリーフ&アーペルでは、原石からジュエリーに採用されるのはわずか1%未満の最上位ランクのみとされており、選別のハードルが年々上がっています。
第二の要因は、ブランドのプレステージ性を維持するためのグローバル価格統一戦略と「ヴェブレン効果(価格が高いほど希少価値と欲望が高まる心理現象)」を背景にしたポジショニングです。値上げの予告が広がるたびに起こるヴァンクリの駆け込み購入理由は、「今日が人生で一番安い」という確信と、手に入れた資産が目減りしないという絶大な信頼に基づいています。
中古市場における取引データを見ても、ヴィンテージ アルハンブラのペンダントやリングは、定価に対するリセールバリューが70%〜90%台、限定品やギヨシェモデルに至っては100%超のプレミアム価格で推移する事例も珍しくありません。単なる装飾品を超え、確固たるヴァンクリーフの資産価値として認識されている点が、2026年における盤石な需要を支えています。