海外発の爆音ミームが、なぜ日本のネット空間でここまで広く定着したのか。その背景には、プラットフォームの文化特性とユーザーの心理的メカニズムが深く関係しています。
第一の理由は、ニコニコ動画やYouTubeにおけるMADカルチャーとの高い親和性です。日本では2010年代中盤から後半にかけて、同じく音割れをギミックとした「音割れポッター(ハリー・ポッターのテーマを歪ませたもの)」などがMAD動画の定番落ちとして流行していました。童心に帰る親しみやすいメロディが突如として破壊的な爆音へと変貌するギャップが、動画のオチやツッコミどころとして極めて使い勝手が良かったといえます。
第二の理由は、「ジャンプスケア(突発的恐怖・驚き)」の快感と笑いの転化です。人間の脳は、予期せぬ大音量に直面すると瞬間的な緊張状態に陥りますが、それが「無害なトーマスの顔」という滑稽な文脈だと理解した瞬間、一気に緊張が緩和され、強い笑いへと変換されます。この緊張と緩和の落差が、中毒性の高い体験を生み出しました。
第三の理由は、ショート動画時代への適合です。TikTokやYouTubeショートなどの縦型短尺プラットフォームにおいて、最初の1〜2秒で視聴者の手を止めさせるインパクト(フック)として、爆音ギミックはアルゴリズム的にも極めて強力に機能しました。