『地縛少年花子くん』最大の魅力は、軽妙でからかい上手な七不思議のリーダー・花子くんが見せる、ふとした瞬間の「底知れぬ哀愁」にあります。普段の無邪気な笑顔の裏側に、決してやり直せない生前の記憶が影を落としています。
読者の胸を最も強く打った言葉の一つが、ヒロイン・八尋寧々に向けて語りかけた「ごめんね、八尋。オレは君を救えない」という独白です。怪異として超常の力を持ちながら、人間の寿命や定められた運命の不可逆性を誰よりも理解している花子くんだからこそ、その無力感と切なさは際立ちます。
花子くんの正体は、約半世紀前(1969年)に中学3年生で命を落とした少年・柚木普です。生前の彼は宇宙飛行士を夢見ながらも、身体中に絶えない傷を負い、孤独のなかにいました。当時、彼を気にかけていた理科担当教師・土籠(現・七不思議の五番目)に月の石を託しながら告げた「オレにはもう、行く場所なんてどこにもないんだ」というセリフは、普が自らの未来を諦めた決定的瞬間として原作読者の記憶に深く刻まれています。
なぜ普は死を選び、なぜ自らの双子の弟である「つかさ」を手にかけてしまったのか――。その真相を背負い続ける彼が口にする「オレは人を殺した罰を受けてるんだ」という言葉には、消えることのない罪悪感と自罰感情が滲んでいます。