順調なバルクアップの過程で突如現れる肉割れ。医学的には「線条斑(せんじょうはん)」や「ストレッチマーク」と呼ばれ、皮膚の深部で生じる物理的な断裂現象です。皮膚は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造で成り立っていますが、表皮が伸縮性に富んでいるのに対し、その下にある真皮層はコラーゲンやエラスチンといった弾性線維で構成されており、急激な体積変化に対して柔軟に伸びることができません。
激しいウエイトトレーニングによって短期間で筋肉量が急増すると、真皮層に過度な張力(テンション)が一方向へかかり続けます。この物理的伸展スピードに真皮の代謝・増殖が追いつかなくなった瞬間、コラーゲン線維の束が耐え切れずに微小断裂を起こします。表皮は破れずに薄く引き延ばされるため、薄くなった表皮越しに断裂した真皮層や皮下毛細血管が透けて見える状態――これが、筋トレで突然皮膚が裂けたように見える根本的な構造です。
さらに見逃せないのが、ホルモンバランスの影響です。ハードな追い込みや高強度トレーニング、あるいはバルクアップ期の高カロリー摂取に伴い、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の分泌バランスが変化します。過剰なコルチゾールは線維芽細胞の働きを抑制し、コラーゲン合成を鈍化させる作用があるため、皮膚の強度が一時的に低下し、いっそう肉割れを誘発しやすい体内環境を作り出してしまいます。