すべては乾いた地中海の島から始まった。19世紀半ば、中央政府の統制が届かないシチリア島において、不在地主の農園を守る自警団的組織が台頭する。これがやがて私的制裁と恐喝を武器に地域を牛耳る秘密結社へと変貌していった。「コーサ・ノストラ(我らの事業)」と呼ばれるこの共同体は、血縁と地縁を絶対の基盤とし、警察や法廷よりも頼りになる、しかし決して逆らえない裏の司法として機能した。
やがて彼らは新天地を目指す。20世紀初頭の大規模な移民の波に乗って大西洋を渡り、ニューヨークを筆頭とするアメリカ東海岸の港湾都市へ雪崩れ込んだ。言葉の壁と差別に苦しむ同胞コミュニティを保護する名目で搾取し、やがて都市の地下経済そのものを飲み込む巨大な怪童へと急成長を遂げたのだ。