鴨肉の仕上がりを決定づける最初の分岐点は、包丁を入れる前の下処理にある。鴨特有の匂いを「芳醇な野趣」ではなく「不快な生臭さ」に変えてしまう主原因は、皮下の余分な脂と筋膜に残るドリップだ。肉をパックから取り出したら、まず清潔なペーパータオルで表面の水分を完全に拭き取らなければならない。
続いて行うべきは、皮目への細やかな格子状の隠し包丁だ。肉の赤身部分まで刃先を入れず、厚い脂肪層の深さ7分目までミリ単位で切り込みを入れる。このひと手間で余分な脂が効率よく溶け出し、皮が縮んで身が反り返る現象を完全に防ぐことができる。さらに日本酒や少量の塩水で表面を洗って拭き上げる「プロの脱水処理」を施すことで、雑味が消え去り、肉本来のピュアな旨味だけが凝縮される。