上弦の鬼たちの中でも、猗窩座の序列と精神構造は極めて独特です。序列としては上弦の壱・黒死牟、上弦の弐・童磨に次ぐ「参」の座に甘んじていましたが、その関係性は殺伐としていました。
自分より後に鬼となりながら先に上弦の弐へ昇格した童磨に対し、猗窩座は激しい嫌悪を露わにしていました。これは単なる出世競争の嫉妬ではなく、感情を持たず女性ばかりを戯れに喰い散らかす童磨の「不誠実さ」が、猗窩座の奥底にある武道家としての誇りと相容れなかったためです。
一方、上弦の壱である黒死牟に対しては、厳しい上下関係を保ちつつも武を極めんとする者同士としての一定のリスペクトを払っていました。人間性を完全に捨て去った他の鬼たちと異なり、猗窩座は「武術の鍛錬」を通じて無意識に人間時代のアイデンティティを保とうとしていたという構造的な矛盾を抱えていました。