行政の債権回収現場を長年取材してきた中で浮き彫りになるのは、「赤や黄色の封筒が届いても、まさか本当に差し押さえられるとは思わなかった」という滞納者の証言の多さです。
SNSや相談窓口に寄せられた実例を見ると、30代の会社員男性は次のように語っています。
「ポストにピンクや赤の封筒が何度も入っていましたが、仕事が忙しく、手持ちの現金も少なかったため見ないふりをしていました。ところがある月の給料日、会社の人事部から呼び出され『市役所から給与の差押通知書が届いた』と告げられました。手取り額から毎月数万円が強制徴収されることになり、職場での信用も一瞬で失いました」
また、個人事業主の40代女性は「赤い封筒を開けずに放置していたら、ある朝突然メインバンクの預金残高がゼロになっていた。取引先への支払いが滞り、事業が破綻寸前に追い込まれた」と当時の恐怖を吐露しています。
役所の徴収課(納税課)担当者の証言によると、現場では滞納者を冷酷に追い詰めることが目的ではなく、「連絡がつかない滞納者に対して、法的措置を取らざるを得ない」というジレンマが存在します。督促状や催告書をいくら送っても開封されず、電話にも出ない場合、自治体側には「地方税法に則って差押えを実行する」以外の選択肢が残されていません。封筒の色の変化は、行政側からの「頼むから一度窓口に来てほしい」という切実なSOSサインでもあるのです。