1987年8月、ふたりは都内の神社で極秘挙式を行い、成田空港での会見で結婚を発表しました。日本中に激震を走らせたのは、結婚そのものだけでなく、志穂美悦子さんの芸能界完全引退という衝撃的な選択でした。
志穂美さんは、故・千葉真一さんが率いたJAC(ジャパン・アクション・クラブ)の看板女優として、『女必殺拳』シリーズや『影の軍団』など数々の金字塔を打ち立てた日本初のアクション女優です。吹き替えなしで高所から飛び降り、激しい立ち回りをこなす彼女の存在は、当時のアジア圏や欧米のアクションファンにとっても圧倒的なアイコンでした。女優としてのキャリアは最高潮に達しており、引退を惜しむファンの声は悲鳴にも似たものでした。
なぜ志穂美さんは潔く表舞台を去ったのか。会見やのちの手記で明かされた背景には、長渕さんからの「家庭に入り、男を支えてほしい」という強い要望がありました。長渕さんは過去に一度結婚生活の破綻を経験しており、家庭を守るパートナーに対して絶対的な献身と安らぎを求めていたとされます。そして何より、志穂美さん自身が「アクション女優としてやり残したことはない。これからは長渕剛という表現者を支える最大の黒子になる」と、自らの意思で人生の舵を切った潔い覚悟がありました。