日本のクリスマスが商業キャンペーンを契機に独自の進化を遂げたのに対し、ヨーロッパ諸国の伝統料理はキリスト教の典礼や土着の信仰と密接に結びついています。
欧米諸国における本物のディナー風景
* イギリス:定番はローストターキー(七面鳥の丸焼き)。クランベリーソースやブレッドソースを添え、芽キャベツのローストや「ピッグス・イン・ブランケッツ」(ソーセージのベーコン巻き)とともに食します。デザートには、数ヶ月前からドライフルーツとブランデーを漬け込んで熟成させた「クリスマスプディング」に火を灯して提供します。 * フランス:フォアグラや生牡蠣、スモークサーモンといった贅沢な前菜から始まり、主菜にはシャポン(去勢鶏)やホロホロ鳥のローストが振る舞われます。 * ドイツ:クリスマスイブには質素にソーセージとポテトサラダを食し、翌25日の本番にはローストグース(ガチョウの丸焼き)に紫キャベツの酢漬けとジャガイモの団子(クネーデル)を合わせるのが伝統的な習わしです。
歴史を刻む伝統菓子:シュトーレンとブッシュドノエルの起源
近年、日本のベーカリーや洋菓子店でも冬の定番となった2大伝統菓子には、それぞれ固有の発祥史が存在します。 シュトーレン(ドイツ): その起源は14世紀、ドイツ東部のドレスデンに遡ります。外側に真っ白な粉砂糖をたっぷりとまぶした楕円形のフォルムは、「幼子イエス・キリストがおくるみ(産着)に包まれている姿」を模したものと伝えられています。生地には酵母のほか、ラム酒に漬け込んだレーズン、レモンピール、オレンジピール、アーモンドなどのナッツ類がふんだんに練り込まれています。クリスマスを待つアドベント(待降節)の4週間にわたり、薄くスライスして毎日少しずつ食べ進めることで、日を追うごとに洋酒とフルーツの風味が生地へと馴染み、味の変化を楽しむ風習があります。 ブッシュ・ド・ノエル(フランス): フランス語で「クリスマスの薪(まき)」を意味するロールケーキです。19世紀末頃、パリのパティシエによって考案されたとされています。薪の形を模している理由には諸説あります。北欧の古代冬至祭「ユール」で太陽の復活を祈って大きな薪を燃やした名残とする説、暖炉で一晩中薪を燃やすことで翌年の無病息災と豊作を願ったという民間信仰、さらには「貧しい青年が愛する女性へ薪を一束プレゼントした」という心温まる逸話まで、火と家庭の温もりへの祈りが込められています。