本作の完成度を決定づけたのは、実力派キャスト陣による鬼気迫る心理描写の応酬です。「ひばりが丘」という閉ざされた階層社会のなかで、2つの家庭の対比が鮮烈なコントラストを生み出しました。
念願の一戸建てを手に入れたものの、周囲のセレブ住人との経済格差や娘の反抗期に苦悩する遠藤真弓を演じた鈴木京香。一方、優雅で完璧な医師夫人でありながら、内側に誰にも言えない家庭崩壊の火種を抱えていた高橋淳子を演じた石田ゆり子。親密な隣人関係を結びながらも、互いに羨望と劣等感を抱き合う2人の微細な表情の変化は、主婦層を中心に凄まじい共感を呼びました。
さらに、自治会婦人部を牛耳り「ひばりが丘のルール」を盾に真弓を精神的に追い詰める小島さと子役の夏木マリの怪演は、視聴者に強烈なストレスとカタルシスを与え、ドラマの緊迫感を一段階引き上げる決定打となりました。
特筆すべきは、真弓の娘・遠藤彩花を演じた杉咲花の演技です。中学受験の失敗を機に母への憎悪を募らせ、リビングで家具を叩き割り、ガラスを粉砕しながら激昂する家庭内暴力のシーンは、当時15歳とは思えない迫真のリアリティを誇り、各メディアのドラマ賞で新人賞や助演女優賞を総なめにしました。当時のインタビューや撮影関係者の証言によると、鈴木京香と本気でぶつかり合った壮絶なリハーサルの積み重ねが、あの狂気じみた名シーンを生み出したと伝えられています。