金沢の駅弁文化を語る上で決して外せないのが、江戸時代から加賀藩の御膳所を務めてきた老舗料亭「大友楼」の存在だ。武家社会の格式高い儀礼料理「加賀料理」の精神を、現代の折り箱の中へ見事に見立てて落とし込んでいる。
派手な調味料でごまかさず、昆布と鰹の上品な出汁でじっくりと煮含められた治部煮(じぶに)や加賀野菜の炊き合わせ。冷めても米粒が立ち、素材本来の輪郭が際立つ調理技術は、百八十年を超える伝統のなせる技だ。ひと口ごとに広がる奥ゆかしい味わいは、慌ただしい移動時間を一瞬にして料亭の座敷へと変えてしまう。