『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が全50話を通じて貫いた作劇は、商業特撮の常識を根底から揺るがすものでした。通常、特撮ヒーロードラマの最終盤では、敵組織の壊滅や未回収の伏線(アイテムの起源、組織の全貌、世界の成り立ちなど)を幾何学的に解き明かす「説明の消化作業」に追われがちです。しかし、脚本を担当した井上敏樹氏は、それらの設定の穴埋めをバッサリと切り捨て、「登場人物たちの感情の落着」のみに筆力を注ぎ込みました。
以下は、従来の典型的なスーパー戦隊の作劇パターンと、ドンブラザーズ最終回における構造的アプローチを客観的に比較した分析データです。
放送当時、ネット上では「ペンギン獣人の謎はどうなったのか」「ドン家の真の歴史は語られないのか」といった疑問の声も一部で見られました。しかし、視聴者の大多数を魅了したのは、難解な設定の辻褄合わせではなく、「生きることのままならなさと、それでも人と人が関わり合う尊さ」を完璧に描き切った人物描写でした。脚本家・井上敏樹氏が『仮面ライダー555』や『鳥人戦隊ジェットマン』で遺してきた叙情的なドラマツルギーが、戦隊シリーズ50年の歴史の中でも屈指の高純度で結晶化したと断言できます。