壁式構造の居住空間に入った瞬間に誰もが実感するのが、部屋の四隅に無駄な出っ張りがないという視覚的な心地よさです。一般的なRC造マンションの多くに採用されている「ラーメン構造」と「壁式構造」の違いを正しく把握することが、住空間の質を見極める第一歩となります。
ラーメン(Rahmen)とはドイツ語で「額縁・枠」を意味し、縦の柱と横の梁を剛接合して建物を支えます。室内に太い柱型や天井の梁型が大きく張り出すため、家具を壁際にぴったり寄せて配置することが難しく、有効面積(デッドスペースを除いた実質利用可能面積)が目減りしやすい難点を抱えています。近年の中高層マンションでは柱をバルコニー側や共用廊下側へ出す「アウトポール工法」も普及していますが、住戸内の梁を完全に排除することは容易ではありません。
対する壁式構造は、柱や梁の役割を「耐力壁」そのものが担っています。そのため、RC造梁柱がない部屋のメリットとして以下の点が挙げられます。
- 室内の凹凸ゼロ:四隅が直角に整然としているため、規格サイズの大型家具や本棚、壁面収納を隙間なくミリ単位でレイアウト可能。
- 空間の有効活用:同じ専有面積70平米であっても、柱型の食い込みがないため体感面積が1〜2割広く感じられる。
- すっきりとした天井面:天井を横切る下がり梁がないため、視覚的な圧迫感がなく、高さを均一に保ちやすい。
しかし、なぜこれほど優れた構造形式がすべてのマンションで採用されないのでしょうか。その最大の理由は「自重による階数制限」にあります。壁体全体が重厚な鉄筋コンクリートで構成されるため、上層階に積み重なるほど下層階にかかる鉛直荷重が天文学的に増大します。法規上も壁式構造5階建て制限の理由として告示1026号等で厳格に規制されており、容積率を最大限に活かして中高層化を図りたい都市部のデベロッパーにとっては、経済設計が成立しにくいという供給側の事情が存在します。