住宅のキッチンスペースでよく見かける「ラジエントヒーター(Radiant Heater)」とは、ガラス天板の下に組み込まれたニクロム線発熱の仕組みを利用した電気調理器です。スイッチを入れるとリボン状のヒーター線に電気が流れ、わずか数秒で赤熱化。そこから放射される遠赤外線と熱伝導によって、天板の上に置かれた調理器具や食材を加熱します。
昭和から平成にかけて広く親しまれた電熱器(シーズヒーター)のコイル部分を平滑なセラミックガラストップの下に埋め込んだ進化版と捉えると、その構造がわかりやすいでしょう。
国内の住宅設備において「2口IH+1口ラジエント」という変則的な組み合わせが標準仕様として普及した背景には、明確な歴史的経緯があります。住設メーカーの担当者は過去の取材において次のように振り返っています。「2000年代初頭、ガスコンロからIHへの転換期において、多くの家庭が『手持ちのアルミフライパンや土鍋がすべて使えなくなる』という強い心理的抵抗を抱えていました。その移行期における緩衝材として、どんな鍋でも使えるラジエントヒーターを1口残す設計が決定打となったのです」。
つまり、ラジエントヒーターの併載は、調理性能を追求した結果というよりも、消費者の買い替え不安を緩和し、かつ製造コストを抑えるための戦略的産物という側面が色濃く残っています。