「オフホワイト」という言葉を語る上で欠かせないのが、2013年にミラノを拠点に立ち上げられたラグジュアリーストリートブランド「Off-White c/o VIRGIL ABLOH」の存在です。色彩としてのオフホワイトが「白とグレーの中間」を指すように、ブランドのコアコンセプトも「白と黒の間のグレーエリアを定義する」という明確な哲学からスタートしました。
建築学と土木工学の修士号を持ち、カニエ・ウェストのクリエイティブディレクターを務めていた創業者ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)は、ストリートウェアの代表格であるTシャツやフーディーに、最高級のイタリア製ファブリックとテーラリングの構造美を融合させました。これこそがオフホワイトブランド特徴の根底にある「ラグジュアリーストリート」という新領域の開拓です。
斜めのストライプ模様(ダイアゴナルストライプ)や交差する矢印(アローロゴ)、そしてあらゆる単語をダブルクォーテーションで囲むデザイン(例:”SHOELACES”、”FOR WALKING”)は、ブランドのシグネチャーとして世界中のユースカルチャーを席巻しました。これらのグラフィックは、道路標識や工業製品といった日常の風景を高級ファッションへと読み替える、コンセプチュアルアートの手法そのものでした。
その影響力を決定づけたのが、2017年からスタートしたオフホワイトナイキコラボ、通称「THE TEN(ザ・テン)」プロジェクトです。エア ジョーダン 1やエア フォース 1といったスニーカー史のアイコンを解体し、素材の裏地を剥き出しにし、ステッチやフォームを再構築したデザインは、スニーカー市場の歴史を完全に塗り替えました。二次流通市場で定価の10倍以上のプレミアム価格を記録し、ヴァージルは2018年、ルイ・ヴィトンのメンズ・アーティスティック・ディレクターにアフリカ系アメリカ人として初めて就任するという歴史的快挙へと登りつめました。